日も沈んだ夜の川。
一人物静かに小舟をこぐ少年。
舟歌を口ずさみながら、どこというあてもなくさすらう。
疲れたので大人がタバコを吸うように休んでいると、
やがて村がみえてきた。
舟から様子をうかがう。
暖かい明かりの中、はなやかに
パーティーダンスが開かれている。
路地裏ともいうべき水路に舟を進める。
装飾や衣装がよりくっきりと見え、また楽曲もはっきり聞こえ、
ただ,うっとりとみとれる。
しかし村域もつかの間、出口に来てしまう。
最初のように静かな川にもどる。
同じように黙黙とこぎ出す。
でも村内の様子が忘れられない。
もっていた笛をとりだし、
耳で覚えた旋律を高らかに奏でる。
月まで届くかのように。
曲が終わり、もう一度村の方を振り返ってみる。
向き直ると、そこには彼方へと流れる
静かな水面がはるかに続くだけだった。