ベートーヴェン ピアノソナタ第28番イ長調 第2楽章 ヘ長調

2011/02/13加筆

「綱海と立向居」

海岸の岩場。
しぶきを上げて打ち寄せる波に乗って
やってきたサーファー、綱海。
サーフボードを自在に乗りこなし、波間をすいすいと抜けていく。

そんなとき、遠くから感じたかすかな予兆。
違う場所から観察するが、やはり感じる。

そこで沖合いへボードをすすめ、なにも見えないような場所でじっと待つ。
遠くでわずかにわき立つ白波。
だんだんと成長し、ついに大波となって彼の前に現れる。

それも恐れず乗りこなし、満足げに浜辺へ戻ってきた。
仲間たちと余韻に浸る。
そのとき、「なにあれ」と一人が指差す。

またしても迫りくる波。
しかしもう恐れるものはなく、果敢に挑むまで。
得意げに跳ね、高らかに舞い上がる。

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一方こちらはサッカーの練習場。
スランプに陥るゴールキーパー、立向居。
新必殺技開発のため、メンバーにつきあってもらい
一心にボールを受け続ける。

しかしアイディアはなかなか出てこない。
かすかに糸口が見えたような気がするので、
これまでの練習を走馬灯のように回想する。

だが・・・、あと一歩というところでスルスルと逃げられる。
結局最初のまま、悩むだけの状態に。

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現在はサッカー部の合宿中。
スランプにある立向居も、気分転換に海岸へやってきた。
しかし練習のことが頭から離れず、砂浜でも一人うずくまって悩むだけだった。

そこをサーフボードを抱えた綱海が通りかかる。
声をかけなくても状況を察した彼は、半ば強引にわき腹へ抱え上げ
沖合いへ連れ出した。

状況がわからず腕の中でじたばたとあわてる立向居。
一見ふざけているようだが綱海は真剣だった。
立向居が悩んでいるところを見捨てるわけにはいかない。

先刻以上に野生の勘を研ぎ澄ませ、波風を読む。
立向居のためにも。

「ミスは許されない・・・」と、冷汗が滴る。
そして、ようやく目当てのビッグウェーブが押し寄せてきた。

抱え込んだままサーフボードに乗り、浜辺まで帰還。
立向居はというと、その波乗りで練習での雑念が洗い流された気分になれた。

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そして練習場にもどる。
メンバーと再び新必殺技を模索する。

やっぱりできない、と思っても今度は引き下がれない。
「こたえなければ・・・」と、綱海の洗練をつねに頭に置く。

そして、沖合で風の動きを読んだように
神経を鋭く研ぎ澄ます。

すると・・・、わきあがってきた。
体の内側から、ほとばしる威圧感。

それが目に見えるように現れ、見事にボールを止めた。
何度か試し、完成したと実感できた。

見ていた綱海とも抱き合ってよろこびに浸る。
その新必殺技の名は―

「ムゲン・ザ・ハンド」。